論文紹介
〔過去掲載分 2009年9月〜12月〕
2009年12月22日更新
論文タイトル Hypothalamic Orexin Stimulates Feeding-Associated Glucose Utilization in Skeletal Muscle via Sympathetic Nervous System
論文タイトル(訳) 視床下部オレキシンは交感神経を活性化することによって摂食に伴う骨格筋でのグルコース利用を亢進する
抄訳 オレキシンニューロンは睡眠・覚醒レベルや動機付け行動を制御する。我々は、マウス、ラットの視床下部腹内側核(VMH)にオレキシンを投与するとVMHニューロンを直接興奮させ、骨格筋を支配する交感神経活動を選択的に上昇させることによって骨格筋のグルコースの取込みが亢進することを見いだした。さらに、インスリンによるグルコース取込みおよびグリコーゲン合成促進作用が増加した。白色脂肪組織ではこのような作用は見られなかった。オレキシンによる作用はβアドレナリン受容体遺伝子欠損マウスでは認められず、このマウスの骨格筋、および血管など骨格筋周辺細胞にβ2 受容体遺伝子を発現させるとオレキシンによるグルコース代謝促進作用が回復した。さらに我々は、自発的にサッカリン溶液を摂取するよう動機付けしたマウスにサッカリンを摂取させると、オレキシンニューロンが活性化し、これにより、インスリンによるグルコース代謝が骨格筋において選択的に増強することを見いだした。以上より、オレキシンおよびVMHにおけるオレキシン受容体は、強い動機付けによる摂食行動と味覚刺激によって活性化し、筋交感神経−β2 受容体経路を介して骨格筋でのグルコース代謝調節作用を促進すると考えられる。
ジャーナル名 Cell Metabolism
巻号 2009|Vol. 10|Issue 6|466-480
著者名 (敬称略) 志内哲也、箕越靖彦、他
所属 自然科学研究機構生理学研究所発達生理学研究系 生殖・内分泌系発達機構研究部門
総合研究大学院大学生命科学研究科 生理科学専攻
2009年11月10日更新
論文タイトル A Common Variation in EDAR Is a Genetic Determinant of Shovel-Shaped Incisors
論文タイトル(訳) EDAR の多型はシャベル型切歯の遺伝的決定因子のひとつである
抄訳 Ectodysplasin A receptorEDAR )は、歯、毛髪、汗腺など外胚葉由来器官の発生に関わる遺伝子であり、近年、非同義多型であるEDAR T1540C(V370A)が毛髪の太さと関連することが示された。また、1540Cの分布は、モンゴロイド特有の形態形質であるシャベル型切歯の分布ともよく一致する。本研究では、東京および先島諸島(宮古島および石垣島)における202人を対象に、シャベル型切歯を中心とした歯形態とEDAR 遺伝子型との関連を、調整した歯列模型およびDNA試料を用いて解析した。その結果、個体の1540Cアリルの保有数は、シャベル型のグレードと非常に強く相関していることが観察された(7.7×1010)。また、歯全体の大きさや近遠心径の大きさとも有意な正の相関が見られた。したがって、このアジア人特異的な非同義多型は、歯や毛髪といった複数の可視的形質と関連することが示されたことになり、その他にも関連する形質が存在するかもしれない。この多型には東アジアにおいて自然選択が働いてきたことが示唆されているが、選択圧および選択の対象となった形質に関しては未だ謎である。
ジャーナル名 American Journal of Human Genetics
巻号 2009|Vol. 85|Issue 4|528-535
著者名 (敬称略) 木村亮介、他
所属 琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構
2009年10月27日更新
論文タイトル Wnt5 is required for notochord cell intercalation in the ascidian Halocynthia roretzi
論文タイトル(訳) Wnt5タンパク質はマボヤ胚の脊索のインターカレーションに必要である
抄訳 多くの動物の胚は発生中に体が前後に長くなっていく。これは、胚細胞が左右から正中面に向けて移動し、互いの間に入り込んでいく収斂と伸張運動 によっている。Wntタンパク質はこの細胞運動に 深く関わっていることが示されてきた。ホヤ胚を使ってWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりした結果、尾の中心を貫いている脊索の収斂運動に異常が見られ、細胞が互いの間に入り込ん でいくことができなくなった。また、一部の脊索細胞のみでWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりしたモザイク解析の結果は、Wntタンパク質が脊索細胞自体で必要とされ、その作用機構が 細胞自律的であることが示唆された。Wntタンパク質は脊索細胞でオートクライン的に働いているようである。
ジャーナル名 Biology of the Cell
巻号 2009|Vol. 101|part 11|645-659
著者名 (敬称略) 庭野智子、高鳥直士、熊野 岳、西田宏記
所属 大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻発生生物学研究室
2009年10月2日更新
論文タイトル Diffusion-Weighted Imaging of Surgically Resected Hepatocellular Carcinoma: Imaging Characteristics and Relationship Among Signal Intensity, Apparent Diffusion Coefficient, and Histopathologic Grade
論文タイトル(訳) 外科的に切除された肝細胞癌(HCC)における拡散強調画像(DWI)―画像上の特徴、見かけの拡散係数(ADC)計測と病理組織学的分化度の比較
抄訳 目的:DWIにおけるHCCの信号強度とADCを病理組織学的分化度(以下分化度)と比較すること。
対象と方法:外科的に切除されたHCC 125結節に対してDWIおよびT2WIにおける信号強度を視覚的に3段階に分類し分化度と比較した。ADCと分化度の相関についても検討した。
結果:DWIにおいて周囲肝実質よりも高信号を示したHCCは114結節であった。これはT2WIにおいて同様の高信号を示した結節が90結節であったことに比べて有意に高い頻度であった。分化度が低下するに従ってDWIでの信号が高くなる傾向が見られたが、この傾向はT2WIでは指摘できなかった。HCCの平均ADCは1.43±0.32×10-3 mm2/secであり過去の報告とほぼ同様であった。ADCと分化度との間には有意な相関は指摘できなかった。
結論:HCCの分化度とADCとの間には明らかな相関はないが、DWIにおける信号強度は分化度が低下するほど高くなる傾向が見られた。しかしながらDWIにおける信号強度から分化度を類推するのはオーバーラップの大きさから困難と思われた。
ジャーナル名 American Journal of Roentgenology
巻号 2009|Vol. 193|Issue 2|438-444
著者名 (敬称略) 那須克宏、他
所属 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻応用放射線医学分野