抄訳
ACE2-アンジオテンシン1-7(A1-7)-A1-7受容体(Mas)軸はレニン-アンジオテンシン(RA)系において、アンジオテンシンIIによるAT1活性化に対して拮抗的に作用する。我々は最近ACE2欠損マウスが早期から握力の低下と骨格筋における老化指標の亢進を認めること、A1-7が高齢マウスの筋力低下を改善させることを報告した(2018 J Cachexia Sarcopenia Muscle.)。本研究ではACE2欠損マウスの生理的老化の亢進がA1-7の産生低下に関連するか検討する目的でACE2欠損マウスとMas欠損マウス、野生型マウスの比較実験を行った。結果として、ACE2欠損マウスでは早期の骨格筋機能低下や骨格筋老化指標の亢進に加え、皮下脂肪組織の加齢性の減少の亢進を認めたが、MAS欠損マウスではそのような変化を認めなかった。一方、A1-7投与は高齢野生型マウス、ACE2欠損マウスに対しては筋力低下の抑制に加え、筋サイズや骨量の増加をもたらしたが、Mas欠損マウスではそのような効果を認めなかった。本研究の結果からA1-7はMasを介して高齢マウスの筋機能や骨量を改善させるが、ACE2欠損マウスに認めた老化の亢進はA1-7-Masに関連しないことが示唆される。ACE2はRA系以外にも多彩な機能を有しており、ACE2が生体老化に及ぼす影響に関しては更なる検討が必要である。