抄訳
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌においては、CTX-M-27産生大腸菌ST131 C1/H30Rクローンの世界的蔓延が問題視されているが、そのプラスミドの特徴や拡散プロセスについては未だ不明な点が多い。
本研究では高齢者介護施設入所者由来のCTX-M-27産生大腸菌ST131 C1/H30Rが保有するプラスミドの全塩基配列を特定し、健常人由来のそれと比較することで、blaCTX-M-27保有プラスミドの特徴を明らかにすることを目的とした。
高齢者由来プラスミドのMLSTは多くがF1:A2:B20に属しており、その特徴から3つのグループに分類することができた。1つめは耐性遺伝子としてblaCTX-M-27のみを有し、senB遺伝子を含む約30kbpの領域を欠くもの、2つめはblaCTX-M-27以外にテトラサイクリンやストレプトマイシンなど数種類の耐性遺伝子を保有するプラスミドで、タイで分離されたプラスミドに類似するもの、3つめはさらにアミノグリコシド耐性遺伝子など9種類の耐性遺伝子を保有するプラスミドで、ドイツで報告された臨床分離株由来のプラスミドと高い類似性(100% query coverage, >98% nucleotide identity)を示すものであった。
このように、我が国の介護施設で生活する高齢者の間にも、すでに海外で広まっているblaCTX-M-27/F1:A2:B20プラスミドと基本構造が類似する複数のプラスミドが広まっていることが明らかとなった。さらなる研究として、blaCTX-M-27保有プラスミド拡散プロセスを明らかにすることが必要であると考える。