抄訳
AMP-activated protein kinase (AMPK)は、細胞内のエネルギー恒常性に関与するセリン・スレオニンキナーゼである。近年、AMPKの活性化剤であるメトホルミンは選択的スプライシングに影響を与えることが報告されているものの、AMPKがどの基質を介して選択的スプライシングを制御するかに関しては不明であった。
本論文では、AMPKの新たな基質としてスプライシング因子であるserine/arginine-rich splicing factor 1 (SRSF1)を同定した。AMPKはSRSF1のRNA認識モチーフ領域内に存在するSer133を直接リン酸化し、これによりRNA認識モチーフを介したSRSF1とRNAとの結合が抑制された。また、マクロファージ刺激タンパク質受容体をコードするRon遺伝子はSRSF1依存的に選択的スプライシング制御を受けるが、実際に、AMPKの活性状態の変化によってSRSF1を介したRon遺伝子のスプライシングパターンの変化も確認できた。
これらの結果から、AMPKはSRSF1をリン酸化することでRNAとの結合を阻害し、選択的スプライシングを制御することが明らかとなった。