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2022/02/07

酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制

論文タイトル
The hdeD Gene Represses the Expression of Flagellum Biosynthesis via LrhA in Escherichia coli K-12
論文タイトル(訳)
酸性で発現誘導する大腸菌遺伝子hdeDのよるLrhAを介したべん毛合成抑制
DOI
10.1128/JB.00420-21
ジャーナル名
Journal of Bacteriology
巻号
Journal of Bacteriology Volume 204 • Number 1 • January 2022
著者名(敬称略)
山中 幸 山本 兼由 他
所属
法政大学 生命科学部 生命機能学科

抄訳

強酸性環境下に晒された大腸菌は、細胞内プロトンを酵素反応で消費し生存する。このグルタミン酸依存的酸耐性(GAD)機構に関する遺伝子群GADクラスターは強酸性で発現誘導される。本論文では、GADクラスターにある唯一機能が不明だった小さな膜タンパク質コード遺伝子hdeDの機能を明らかとした。
hdeDプロモーターは、グリセロールを炭素源とする最小培地で誘導された。hdeD欠失株では、べん毛合成および運動性に関連する全ての遺伝子発現が増加させ、それはべん毛合成の転写活性化因子FlhDCのリプレッサーLrhAの遺伝子プロモーター活性の抑制に起因していた。実際、hdeD, gadE, lrhA欠失株は菌体あたりのべん毛数が増加し運動性が向上した。
推定したHdeD構造分析から、HdeDは中性付近の微細なpH変化を感知する新しい膜センサーであることが示唆された。したがって、強酸性環境下に晒された大腸菌はHdeD合成を誘導し、その後増殖可能な中性域環境に移った時、HdeD依存的にべん毛合成を停止させ、細胞エネルギーを細胞分裂に集約するはたらきを推定した。このシステムは、大腸菌などヒト消化器で下痢などを引き起こす病原性細菌にとって、経口侵入から胃を経て腸管上で集団形成するため、重要であると考えられる。

 

 

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