抄訳
Methyloprofundus属細菌は海洋性の好気的メタン酸化(資化)細菌である。本属を代表するイガイ科二枚貝の共生細菌が精力的に研究される一方、自由生活型の種を対象とした研究は数える程しかない。沖縄トラフ伊平屋北海丘(沖縄本島北西160 km)の深海熱水活動域では、本属共生細菌をもつ二枚貝が大規模なコロニーを形成している。我々はここに自由生活種も生息している可能性が高いと考え、熱水の影響の異なる4地点(水深約1,000 m)でMethyloprofundus属細菌群集をターゲットに遺伝子解析を行った。その結果、自由生活型と推定される161もの種相当グループを検出し、群集構造の違いと熱水の影響の強さが関係している可能性を見出した。並行して行った培養実験では、群集の優占種且つ新種と推定されるメタン酸化細菌の集積培養に成功し、ゲノム解析により厳しい環境での生存競争に有利と考えられる機能遺伝子を複数見つけた。過去の知見と合わせると、Methyloprofundus属細菌は低酸素環境も含め世界の様々な海洋環境に遍在している可能性がある。