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2022/02/16

ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価

論文タイトル
Functional Lactotrophs in Induced Adenohypophysis Differentiated From Human iPS Cells
論文タイトル(訳)
ヒトiPS細胞から分化させた下垂体前葉におけるプロラクチン(PRL)産生細胞の機能評価
DOI
10.1210/endocr/bqac004
ジャーナル名
Endocrinology
巻号
Endocrinology Vol. 163 Issue 3 (bqac004)
著者名(敬称略)
三宅 菜月, 永井 孝,須賀 英隆 他
所属
須賀 英隆:名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学
三宅 菜月, 永井 孝:名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学

抄訳

 これまでヒトiPS細胞から下垂体前葉を分化誘導し、機能的な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞を作成する方法を報告してきたが、PRL産生細胞については検討していなかった。PRLは乳汁分泌に関与するホルモンで、主に下垂体前葉で産生、分泌される。また、高PRL血症は月経異常や不妊の主な原因の一つである。今回、ヒトiPS細胞から分化誘導した下垂体前葉オルガノイドにおけるPRL産生細胞の機能を評価した。
 下垂体前葉に分化誘導した凝集体からPRLの分泌が確認され、経時的に分泌能力が増加した。蛍光免疫染色および免疫電子顕微鏡法でPRL産生細胞の存在を確認した。PRL分泌は、種々のPRL分泌促進薬によって亢進し、ブロモクリプチンによって抑制された。また細胞塊中心部の視床下部組織にはドパミン作動性神経が存在し、PRL産生細胞への接続が示唆されたことから、ドパミンによる調節機構も再現できている可能性が示された。
 ヒトiPS細胞からヒト生体内と同様の分泌反応性を示す下垂体PRL産生細胞を作成した。今後、創薬研究や腫瘍化のメカニズムの研究などに活用できるとともに、下垂体の再生医療へとつながることが期待される。

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