抄訳
本来細胞外には存在しないATP は炎症部位やがん組織で上昇し、ATP 受容体P2X7 を介して免疫応答を活性化する。この際、細胞膜の内層・外層間で⾮対称的に分布していたリン脂質はスクランブラーゼの作⽤によりその分布が変化し、細胞は速やかに死滅する。この過程でのリン脂質スクランブリングの責任分⼦を同定するため、CRISPR sgRNA ライブラリーによる遺伝⼦スクリーニングを⾏った。その結果、神経有棘⾚⾎球症の原因遺伝⼦であるXk 及びVps13a が同定された。そしてXk とVps13a は細胞膜上で複合体を形成していること、どちらを⽋損させてもP2X7 活性化に伴う細胞膜でのリン脂質スクランブリングが抑制され、細胞が死滅しないことを⾒出した。Xk はスクランブラーゼXkr8 のホモログであり、Vps13aはオルガネラ間のリン脂質輸送を担うタンパク質として報告されている。以上より、Xk-Vps13a 複合体がP2X7より何らかのシグナルを受けて活性化され 細胞膜上でリン脂質のスクランブリングを起こすと結論した。