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2022/04/15

震災後の相馬井戸端長屋で独居高齢者の孤独死を防げた事例

論文タイトル
Promoting independent living and preventing lonely death in an older adult: Soma Idobata-Nagaya after the 2011 Fukushima disaster
論文タイトル(訳)
震災後の相馬井戸端長屋で独居高齢者の孤独死を防げた事例
DOI
10.1136/bcr-2021-243117
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.15 No.2 (2022)
著者名(敬称略)
伊東 尚美、木下 ゆり、森田 知宏、坪倉 正治
所属
福島県立医科大学 放射線健康管理学講座

抄訳

この女性の事例は、震災後の孤立対策としての施策「相馬井戸端長屋(以下、長屋)」における、独居高齢者が孤独な死を回避することができた典型的な事例である。 2011年の東日本大震災で家と土地を失い、家族と離れて住むことになった80代女性が選んだのは、「長屋」だった。血のつながりが何よりも大事とされ、三世代同居が当たり前の日本の地方の社会において、災害後の避難や転居が家族の機能を揺るがした。災害後の生活再建が課題である当地において、震災後の長屋建設は、住み慣れた土地で部落の顔見知りの人たちと暮らすという新しい生活スタイルを提供した。長屋に関連する管理人やお弁当配食などの公的なサポートも高齢者の自立生活を支えていた。同時に、長屋の住民同士のインフォーマルなサポートは有効であった。急変時身近で世話をしたのは長屋内のお隣さんで、本人の望む医療へアクセスでき、孤独死を免れ、離れて住む家族の負担も最小限であったその最期の在り方は注目に値する。家族でなければできないと思われていたサポートが、災害後の地域のコミュニティ形成の中でできていた。災害のみならず、高齢化と孤立化が進むこれからの社会で、新しい暮らし方として提案できるだろう。

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