抄訳
光遺伝学は神経細胞の活動を光により制御する革新的技術である。光遺伝学には光駆動性イオンチャネルであるチャネルロドプシンが利用されており、中でも近年自然界から発見されたChRmineは、イオンポンプ型ロドプシンと類似の配列を持つにも関わらず、高い光感受性とチャネル活性、長波長光により活性化されるという強力な性質を有するイオンチャネルとして働くことが報告されており、その理由に注目が集まっていた。本研究では、ChRmineのクライオ電子顕微鏡構造を決定し、ChRmineがイオンチャネルとして機能する構造基盤の一端を明らかにした。また、得られた構造情報を用い、励起波長・キネティクス特性を向上させた改変型ChRmineを開発し、さらには3色の可視光を利用して複数の神経細胞集団を同時に光操作・計測するという発展的光遺伝学実験を成功させた。本研究成果は、ChRmineがイオンチャネルとして機能する仕組みの一端を解明しただけでなく、新規ロドプシンの設計や創製に対する道標、そして神経科学分野へ強力なツールを提供したという点で、神経科学、医療の発展につながると期待される。