抄訳
クローン性造血とは、加齢による遺伝子変異を伴った造血細胞のクローン性増殖により特徴づけられた現象である。クローン性造血は骨髄系腫瘍の発症のリスク因子であることが判明していることから前白血病細胞とも表現されることがあり、前白血病状態から白血病への進展には付加的な異常が必要であると考えられている。そこで、前白血病細胞から白血病への進展において協調的に機能するシグナルを同定するために、今回我々はin vivo RNAiスクリーニングによるアプローチを用いた。スクリーニングの結果、ユビキチンリガーゼであるTRAF6を同定すると共に、マウス前白血病細胞におけるTRAF6欠損が癌遺伝子MYC依存性に骨髄性白血病を引き起こすことを見出した。重要なことに、TRAF6は一定割合でヒト骨髄性白血病患者細胞においても発現が低下していることから、TRAF6シグナルの抑制がヒト白血病発症に寄与していると思われた。分子学的機序の発見として、TRAF6はMYCをユビキチン化することで同修飾部位のアセチル化を抑制すると共に、MYCタンパクの安定化には関与せず転写因子活性を抑制することを見出した。