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2022/05/25

超伝導ドームを伴う純粋なネマティック量子臨界点

論文タイトル
Pure nematic quantum critical point accompanied by a superconducting dome
論文タイトル(訳)
超伝導ドームを伴う純粋なネマティック量子臨界点
DOI
10.1073/pnas.2110501119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS Vol.119 No.18 e2110501119
著者名(敬称略)
石田 浩祐 他
所属
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻

抄訳

量子臨界点とは何らかしらの対称性の破れを伴う相転移が絶対零度まで抑制された状態であり、そこではその相転移と関連した量子揺らぎが強く発達する。この量子揺らぎを媒介として超伝導が発現しうることが知られており、特に磁気秩序の場合、その量子臨界点を中心としてドーム状の超伝導相が現れることから、それらが密接に関係していると考えられてきた。一方で、最近では電子ネマティック秩序と呼ばれる新しい電子状態が様々な超伝導体で発見されている。この電子状態は結晶格子のもつ回転対称性を自発的に破っており、電子の集団が方向性を獲得したという点でネマティック液晶との類似性がみられ、さらには超伝導との関係にも興味が持たれている。しかしながら、多くの場合この電子ネマティック秩序は磁気秩序や電荷秩序を伴って現れるため、その量子臨界点が単独で超伝導にどのように影響するのかを調べるのは困難であった。本研究では、鉄系超伝導体セレン化鉄(FeSe)に注目し、この物質ではSeをTeで一部置換していくことによって他の秩序を伴わない、純粋なネマティック量子臨界点が現れることを明らかにした。このネマティック量子臨界点付近を中心としてドーム状の超伝導相が現れていることから、本研究は電子ネマティック秩序の関連した量子揺らぎがそれ単独で超伝導を増強しうることを初めて実験的に示したものといえる。

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