抄訳
サポウイルスは、ノロウイルスと同様に世界中で流行するウイルス性急性胃腸炎の主要な原因物質である。抗ウイルス薬やワクチンの開発には、ウイルス粒子の詳細な構造情報が必要であるが、サポウイルスではこれらを研究するためのウイルス様中空粒子(VLP)の作製が難しく、研究が遅れていた。今回、我々はヒトサポウイルスGI.6株で安定なVLPの作製に成功し、クライオ電子顕微鏡単粒子解析により2.9Å分解能でそのカプシド(殻)構造を明らかにした。結果、サポウイルス表面の突起構造は、二層の屋根構造からなるアーチ型をしており、他のカリシウイルス科ウイルスとは異なることがわかった。また、カプシドの突起の先端には、アミノ酸の4つの超可変領域が集中して存在しており、さらに、これらの隙間に宿主細胞との結合を担うアミノ酸領域が局在すると推定された。本成果により、サポウイルスに対する治療薬の開発が大きく加速されると期待される。