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2022/05/31

解糖系が亢進した腫瘍微小環境では乳酸により制御性T細胞のPD-1発現が高まる

論文タイトル
Lactic acid promotes PD-1 expression in regulatory T cells in highly glycolytic tumor microenvironments
論文タイトル(訳)
解糖系が亢進した腫瘍微小環境では乳酸により制御性T細胞のPD-1発現が高まる
DOI
10.1016/j.ccell.2022.01.001
ジャーナル名
Cancer Cell
巻号
Volume 40, Issue 2
著者名(敬称略)
熊谷 尚悟、西川 博嘉 他
所属
国立がん研究センター 研究所 腫瘍免疫分野、国立がん研究センター 先端医療開発センター 免疫TR分野、名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞免疫学

抄訳

腫瘍微小環境(TME)におけるエフェクターCD8陽性T細胞と制御性T細胞のPD-1発現バランスがPD-1阻害治療の臨床効果を予測することをこれまで我々は報告した。しかし、このPD-1発現バランスを決定する要因は不明なままであった。我々は実際の患者検体を解析し、MYC増幅腫瘍や転移性肝腫瘍などの解糖系の亢進した腫瘍において、制御性T細胞がエフェクターCD8陽性T細胞よりも優位にPD-1を高発現することを見出した。低グルコース環境下では、制御性T細胞は乳酸トランスポーターを介して乳酸を活発に吸収してNFAT1の核内移行を促進し、PD-1発現が高まった。その一方で、エフェクターCD8陽性T細胞によるPD-1発現は低下した。解糖系の亢進した腫瘍ではPD-1阻害治療によりPD-1陽性制御性T細胞は活性化し治療抵抗性を示した。解糖系の亢進した腫瘍の産生する乳酸が、PD-1発現の亢進を介してTMEにおけるTreg細胞の機能に対するチェックポイントとなることが示唆された。

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