抄訳
脳の免疫細胞であるミクログリアは、シナプス可塑性や神経活動を調節し、神経回路の維持に寄与している。近年、ミクログリアの脳領域ごとの不均一性が注目され、特に海馬では、神経回路の発達やその記憶に関連した機能に、ミクログリアによるシナプスリモデリングが関与しているようだ。海馬ミクログリアの挙動を生体内で観察する意義は大きいが、手術により生じる炎症が問題となる。
本論文では、マウス海馬CA1全層のミクログリアを、生体内で慢性的に二光子観察する方法を解説する。この方法では、術直後の炎症は数週以内に鎮静化し、以降1か月以上にわたって、静止型ミクログリアの突起の形態変化を解析することができる。ラミファイド型ミクログリアの長期かつ高分解能なイメージングには、手術侵襲の最小化とイメージング手法の最適化が肝要である。神経細胞とミクログリアとの二色イメージング法も提示し、海馬の複数細胞種の相互作用の観察基盤を提供する。本手法により、海馬におけるミクログリア機能の解明が進展することが期待される。