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2022/07/25

グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明

論文タイトル
Structural basis for heme detoxification by an ATP-binding cassette–type efflux pump in gram-positive pathogenic bacteria
論文タイトル(訳)
グラム陽性細菌がABCトランスポーターによって遊離ヘムを解毒する仕組みを解明
DOI
10.1073/pnas.2123385119
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
PNAS2022  Vol. 119  No. 27  e2123385119
著者名(敬称略)
中村寛夫、久野玉雄、白水美香子他
所属
理化学研究所生命機能科学研究センタータンパク質機能・構造研究チーム

抄訳

ヘムは生物にとって重要なタンパク質コファクターであるが遊離状態では毒にもなる。病原菌は主に宿主のヘモグロビンのヘムを鉄源として奪い増殖するが、このとき生ずる遊離ヘムの毒性を回避するためにグラム陽性細菌ではヘムに特異的なATP-binding cassette (ABC)排出ポンプ(HrtBA)が働いていると考えられている。本研究では組換え大腸菌を用いたHrtBAタンパク質によるヘム解毒、生化学的機能解析、エックス線結晶構造解析を行った。その結果、ヘムは難溶性であることから細胞膜にインターカレートして毒性を発揮するが、HrtBAの膜貫通ドメインの細胞膜外葉付近に結合すること、ATPがHrtBAの細胞質側にあるヌクレオチド結合ドメインに結合すると膜貫通ドメインのヘム結合部位が収縮してヘムが解離すること、ATP加水分解でこれらのステップがターンオーバーすることで細胞膜からヘムが汲み出されることがわかった。HrtBAを欠損したグラム陽性細菌は血液中では増殖が抑制されることから本研究による生化学アッセイや立体構造に基づく阻害剤スクリーニングはグラム陽性細菌によって引き起こされる敗血症や髄膜炎の予防、治療に貢献できると思われる。



図。ヘム排出ポンプHrtBAが細胞膜からヘムを汲みだす出すモデル
ATPが結合していない時(フリー型)ではHrtB膜貫通ヘリクスが横にずれていて、細胞膜にあるヘムが膜貫通ヘリクスに結合する(ヘム型)。ヘムが細胞膜外葉付近に結合していることがわかる。このあと、ATPがHrtAサブユニットに結合すると、膜貫通ヘリクスが縮小してヘムが追い出される。ボールモデルはヘムを認識するアスパラギン酸で、ヘムが配位するとATP加水分解活性が上昇する働きに必要なアミノ酸である。

 

 

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