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2024/08/01

単純ヘルペスウイルス1型のICP22とFACTの相互作用がウイルス遺伝子発現および病原性に与える影響

論文タイトル
Impact of the interaction between herpes simplex virus 1 ICP22 and FACT on viral gene expression and pathogenesis
論文タイトル(訳)
単純ヘルペスウイルス1型のICP22とFACTの相互作用がウイルス遺伝子発現および病原性に与える影響
DOI
10.1128/jvi.00737-24
ジャーナル名
Journal of Virology
巻号
Journal of Virology Ahead of Print
著者名(敬称略)
劉 少聰、丸鶴 雄平、川口 寧 他
所属
東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ウイルス病態制御分野
著者からのひと言
ICP22欠損ウイルスの表現型から、ICP22がHSV-1の効率的な遺伝子発現に必要であることは長く知られていましたが、その機能発現機構には不明な点が多く残されていました。この論文によりICP22とFACTの相互作用がHSV-1の遺伝子発現に貢献することが明らかになったことで、「ICP22はFACTの機能を制御し、HSV-1遺伝子の転写を促進する」という、ICP22の機能発現機構の一端を明らかにすることができました。

抄訳

Facilitates chromatin transcription(FACT)は、ヌクレオソームと相互作用し、RNAポリメラーゼII (pol II)の下流および上流でヌクレオソームの解離と再構成を制御することで転写を促進する。先行研究では、HSV-1(単純ヘルペスウイルス1型)タンパク質ICP22が感染細胞においてFACTと相互作用し、FACTをウイルスDNAにリクルートすることが報告されていたが、ウイルス生活環における両者の相互作用の意義は不明であった。本研究は、ICP22がFACTと効率的に相互作用する為に必要な最小ドメインとして、ICP22内の5つの塩基性アミノ酸から成るクラスターを同定した。この塩基性アミノ酸クラスターにアラニン置換変異を導入した組換えHSV-1は、感染細胞におけるUL54、 UL38、 及びUL44のmRNA量、ウイルスDNAにおけるpol II結合量、感染マウスの致死率が野生株と比較して有意に低下した。更に、FACT阻害剤であるCBL0137はHSV-1感染によるマウスの致死率を有意に低下させた。これらの結果は、ICP22とFACTの相互作用が効率的なHSV-1遺伝子発現と病原性に必要であり、FACTがHSV感染症の治療標的となることを示唆する。

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