抄訳
グラム陰性、絶対嫌気性、化学従属栄養細菌IA91株が、日本の深部帯水層の堆積物と地層水から分離培養された。IA91株は、増殖する他の細菌から放出される細胞壁断片ムロペプチドを、自身の細胞壁ペプチドグリカン、エネルギー源、炭素源として利用し、細胞壁の形成、増殖、更には細胞の形状に至るまで他の細菌に依存した。 IA91株細胞は桿状であるが、他の細菌に由来するムロペプチドがない場合あるいは枯渇すると球状に変化し、やがて死滅した。IA91株は非常に限られた基質、酵母エキス、ムロペプチド、D-乳酸のみを利用し増殖した。酵母エキス分解の主な最終生成物は酢酸、水素、二酸化炭素であった。水素を除去するメタン生成古細菌との共培養はIA91株の増殖を強く促進した。16S rRNA遺伝子、及び、保存タンパク質配列に基づく分子系統解析の結果、IA91株は培養株の存在しない候補門Marine Group A(またはSAR406、Ca. Marinimicrobia)に属することが示された。表現型および系統学的特徴に基づき、IA91株を新属新種Fidelibacter multiformis、新科Fidelibacteraceae、新目Fidelibacterales、新綱Fidelibacteria、新門Fidelibacterotaとして提案した。