抄訳
生命にとって鉄は不可欠な元素であるが,環境中には微量しか存在しない.そのため,生命は外界の鉄を細胞内に取り込むシステムを高度に進化させて来た.細菌は外界環境の鉄を感知し,それに応じて鉄取り込みに関わる因子の発現を活性化するが,鉄を感知する分子メカニズムの全容は,長年にわたり明らかにされてこなかった.
グラム陰性細菌は外界の鉄を取り込む際に,分子モーターであるTonB-ExbBD複合体が生み出す機械的な力を利用することが知られている.本研究ではこの機械的な力が,シグナル伝達を担う膜タンパク質FecRにも伝わり,FecRの連続的な切断を引き起こすことを突き止めた.そして,この切断によって生じたFecR断片が,鉄の取り込みに必要な遺伝子群の発現を誘導することを明らかにした.本研究は,タンパク質切断を介したシグナル伝達の新たなメカニズムを提示し,生体機能制御の基盤となる仕組みの一端を明らかにしたものである.
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プレスリリース:https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2025/04/entry18-14282.html