抄訳
従来のCTはMRIに比べコントラスト分解能が低く、上咽頭癌の頭蓋底浸潤評価において骨内の造影効果を正確に評価することは困難であった。Bone subtraction iodine (BSI) 画像は、320 列面検出器 CT を用いて造影前後のCT 画像を正確に差分することにより,骨内のヨード造影剤を描出する手法である.本研究は,上咽頭癌頭蓋底浸潤の評価にBSI画像が有用かを検証した.連続した上咽頭癌患者44例を対象とし,320列面検出器CTを用いて,造影前後の volume scanを非剛体位置あわせを用いて差分し,BSI画像を作成した.2名の神経放射線科医により,頭蓋底6部位に対し,従来のCTのみ(CCT)の評価とCCTとBSIを組み合わせた(CT-BSI画像) 評価を比較し、MRI・CTの総合的評価を参照基準として診断能を算出した。26症例(84亜部位)で頭蓋底浸潤を認め、CT-BSI画像ではCCTよりも高い感度(92.9% vs 78.6%, P=.02),特異度(95.6% vs 86.1%, P=.01)を示し、ROC曲線によるAUCはCT-BSIで有意に大きかった(AUC = 0.98 vs 0.90, P<.001).BSI画像は骨組織内のヨード造影剤分布が正確に評価可能となり,CTによる頭蓋底浸潤の診断能向上に寄与する。この技術により造影MRIが撮像できない患者に対しても、正確な病期決定と放射線治療計画が可能となると考えられる.