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2019/02/18

ビタミンB1のde novo合成が欠失しているピロリ菌のビタミンB1輸送系

論文タイトル
Thiamin transport in Helicobacter pylori lacking the de novo synthesis of thiamin
論文タイトル(訳)
ビタミンB1のde novo合成が欠失しているピロリ菌のビタミンB1輸送系
DOI
10.1099/mic.0.000765
ジャーナル名
Microbiology Microbiology Society
巻号
Microbiology Vol.165 No.2 (224-232)
著者名(敬称略)
野坂 和人 他
所属
武庫川女子大学 薬学部薬学科 生化学Ⅱ講座

抄訳

ピロリ菌Helicobacter pyloriは、人の胃粘膜に長期間持続感染するグラム陰性細菌であり、世界人口の約半数が保因者であると推定されている。ピロリ菌感染は萎縮性胃炎、消化性潰瘍及び胃癌などの誘発と関連しており、治療法としては三剤併用療法が挙げられるが、耐性菌の出現や再発が臨床上問題となっている。本論文において、ピロリ菌はde novoのチアミン(ビタミンB1)生合成酵素遺伝子が欠失しているために、外界からチアミン(>1 nM)を取り込まなければ生育できないことが示された。また、pnuT欠損株ではチアミン要求濃度が高くなる(>100 nM)ことが観察され、ピロリ菌には複数のチアミン輸送系が存在し、PnuTは高親和性チアミン輸送タンパク質であることが示唆された。PnuTによるチアミン輸送は促進拡散であるが、取り組まれたチアミンはチアミンピロホスホキナーゼにより効率よくピロリン酸化されるので、チアミンの輸送は単方向になると思われる。チアミンの胃粘膜内濃度が血液中濃度(2〜30 nM)と同程度であるとすると、PnuTは新規抗ピロリ菌薬の分子標的として期待される。

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