抄訳
多能性幹細胞からin vitroで臓器を作製することは再生医療における究極的な目標であるが、構成細胞の多様性や3次元的な立体構造を再現する必要があるため非常に困難であるとされている。 そこで我々は膵臓欠損を示すPdx1ノックアウト(KO)マウスの胚盤胞にマウス多能性幹細胞を注入することで、発生段階における膵臓の空きを補完し、完全に多能性幹細胞由来の細胞から構成される膵臓をマウス生体内に作製することに成功した。 またこの“胚盤胞補完法”の原理が異種間でも成立するためには多能性幹細胞が異種の胚発生に寄与できなくてはならない。そこでマウスおよびラットの多能性幹細胞をお互いの胚盤胞に注入し、マウス-ラット異種間キメラの作製を試みた。 その結果、異種間キメラはどちらの方法でも成立し、全身に多能性幹細胞由来の細胞が存在していた。さらに以上の知見を組み合わせ、Pdx1 KOマウスの胚盤胞にラット多能性幹細胞を注入すると、機能的なラットの膵臓がマウス体内に作製できた。 これらの結果は異種生体内の環境を利用して多能性幹細胞由来の臓器を作製することが可能であることを示すものである。