抄訳
現在、がん化学療法では、薬剤のがん集積性を迅速に判別する手段は無く、また、治療効果が判明するまで長い期間が必要となり、その結果「手遅れ」となる場合も多く見受けられる。本研究では、我々が開発した高分子ミセル型DDSに、MRI造影剤(Gd-DTPA)を搭載することによって、がんへの集積から治療効果までをイメージングにより追跡することができる「見えるDDS」を開発した。Gd-DTPA搭載ミセルは、Gd-DTPA単体の24倍の水プロトン緩和時間短縮効果を有しており、MRI造影剤として高い性能を有することが明らかになった。また、難治性の膵臓がんに対して見えるDDSの効果を評価するために、マウス膵臓がんモデルを用いたMRイメージングとMRIによるDDSの治療効果の追跡を行った。その結果、高分子ミセルは、膵臓がんモデルに効果的に集積し、優れた薬理効果を示すことが、MRイメージングによって明らかになった。
本システムを利用すれば、がん治療が薬物の患部への到達を確認しながら行うことができ、さらに治療効果をリアルタイムで追跡できるようになるものと考えられ、「手遅れのない」確実ながん治療の実現が期待される。