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2011/04/19

種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態

論文タイトル
Fluorescence kinetics in HeLa cells after treatment with cell cycle arrest inducers visualized with Fucci (fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator) 
論文タイトル(訳)
種々の細胞周期停止誘導体処理後Fucciによって可視化されるHeLa細胞での蛍光動態
DOI
10.1042/CBI20100643
ジャーナル名
Cell Biology International 
巻号
April 2011 |Vol. 35 |No. 4 |359-363
著者名(敬称略)
戒田 篤志、三浦 雅彦
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔放射線腫瘍学分野

抄訳

Fucciは、理研の宮脇らによって開発された生細胞における細胞周期動態を可視化するシステムである。Fucciを導入した細胞は、正常な細胞周期回転中において、G0/G1期に赤色、S/G2/M期には緑色の蛍光を発する。このシステムは、抗癌剤による細胞動態解析等、癌治療分野への応用が期待されるが、その蛍光動態に関する基本的特性は不明である。そこで我々は、Fucci導入HeLa細胞を用いて、G2/Mアレストを誘導するX線照射や、S期初期でのアレストを誘導するハイドロキシウレア(HU)、そしてM期アレストを誘導するノコダゾールによる処理を施し、それぞれの処理後の蛍光動態を、蛍光顕微鏡での観察とフローサイトメトリーにより解析した。X線照射後またはHU投与後20hには、ほとんどの細胞が緑色蛍光を発し、DNA量によって評価した細胞周期動態と蛍光動態が一致していたが、ノコダゾール投与後では、M期に同調しているにもかかわらず、異常な赤色蛍光の誘導が認められた。このように処理によっては、細胞周期動態と一致しない予期せぬ蛍光動態をもたらす場合があり、Fucciを応用する上で注意が必要であることが分かった。ノコダゾールは微小管重合阻害剤であり、この処理によって赤色蛍光を制御するCdt1のSCFSkp2によるユビキチン化がM期で抑制される知見は興味深い。

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