抄訳
SNAP-29(synaptosomal-associated protein 29)は細胞内物質輸送において小胞膜と標的膜の融合に働くSNARE(soluble N-ethylmaleimide-sensitive factor attachment protein receptor)分子の1つであり、その遺伝子異常は皮膚表皮角化細胞において層板顆粒分子が蓄積するCEDNIK syndrome(cerebral disgenesis、neuropathy、ichthyosis、keratoderma)の原因となることが報告されている。本研究では、線虫C. elegans の腸上皮細胞におけるSNAP-29ホモログの役割に注目し、解析を行った。その結果、SNAP-29の機能阻害をすると、腸細胞からの卵黄成分(リポタンパク質)の分泌や膜タンパク質の細胞膜への輸送に異常を示し、また違う組織である卵母細胞においても細胞膜への物質輸送に異常を示した。また、SNAP-29はゴルジ体、細胞膜、エンドソームに局在し、この遺伝子の機能阻害によってゴルジ体やエンドソームに局在する膜タンパク質が小型の膜小胞へと分散してしまうことが明らかとなった。これらのことから、SNAP-29は小胞輸送経路における様々なオルガネラに局在し、細胞膜への物質輸送を制御するとともに、ダイナミックに変化するこれらのオルガネラの機能と恒常性維持に働くことが明らかとなった。