本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2012/04/10

高分子を内封したモデル細胞膜の融合と分裂のカップリング

論文タイトル
Coupling of the fusion and budding of giant phospholipid vesicles containing macromolecules
論文タイトル(訳)
高分子を内封したモデル細胞膜の融合と分裂のカップリング
DOI
10.1073/pnas.1120327109
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS 2012 ; published ahead of print April 2, 2012, doi:10.1073/pnas.1120327109
著者名(敬称略)
鈴木宏明、四方 哲也 他
所属
大阪大学 大学院情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 共生ネットワークデザイン学講座

抄訳

生命の起源に関する研究においては、現代の細胞でみられるタンパク質等の高度な制御がなくとも原始的細胞の自己増殖が起こったと考えられている。細胞膜は細胞を形づくるのに必須の要素であり、その成長と分裂を比較的シンプルな物理化学的過程から再現する実験が行われてきた。  本論文では、リン脂質から成るジャイアントリポソームを融合した後、自発的に分裂様の変形が誘起されることを報告した。この現象は、リポソームの内部にポリエチレングリコールやデキストランなど生体高分子を模した物質を内封した場合のみに、球形のリポソームが融合によって余剰の膜面積を得た後に起こることを示した。 リポソームの内部に高分子が含まれる場合、高分子の重心は自身の半径よりも膜に近づくことができないので、膜の内側には高分子が排除された領域が存在する(排除体積)。この領域は高分子が溶解した領域に比べて化学ポテンシャルが大きいので、排除体積が小さくなる方向に系の状態が変化する。その結果、膜の曲率が増大し、リポソームの分裂様の変形が起こる。この物理的効果は特定の物質の性質に依らないため、原始細胞の増殖の議論において広範に適用可能な一般性の高いものであることを示した。

論文掲載ページへ