抄訳
リンパ球表面抗原CD38は哺乳類細胞における主要なNAD分解酵素であり、サイクリックADPリボースの産生を介して細胞内カルシウム動員に関与する。また脂質ラフトに局在化して細胞増殖や細胞死のシグナルを制御する。CD38は細胞表面上で四量体を形成することが知られていたが四量体の構造と機能的な意義は不明だった。本論文では部位特異的架橋反応と結晶構造解析を組み合わせてマウスCD38の細胞表面での多量体化に関与する3種類の接触面 (I-III) を明らかにした。接触面 (I) により膜の直上で二量体化したCD38が、接触面 (II, III) によりさらに組み合わされて四量体が形成される。コアとなる二量体同士が結合することはCD38の触媒活性と脂質ラフトへの局在化のどちらにも必要であった。CD38の糖鎖付加は四量体の自己重合を抑制していることが示唆された。四量体形成はCD38の多彩な分子機能の構造基盤であると考えられる。