抄訳
シアノバクテリオクロムは、シアノバクテリアに広く分布するテトラピロール結合型光受容体で、フィトクロムのスーパーファミリーに属する色素結合型GAFドメインをもつ。シアノバクテリオクロムは多様な分光特性をもついくつものサブクラスに分かれる。そのなかで、糸状性アナベナAnabaena sp. PCC 7120と好熱性Thermosynechococcus elongatus BP-1の走光性光受容体(以下、AnPixJとTePixJ)はそれぞれ赤/緑型と青/緑型サブクラスの代表である。論文では、AnPixJのGAFドメインの赤色光吸収型(Pr)とTePixJのGAFドメインの緑色光吸収型(Pg)の結晶構造を決定した。その構造は、フィトクロムのGAFドメインとおおむね似ていたが、以下のような大きな特徴がみられた。(1) 発色団は、C5-Z,syn/C10-Z,syn/C15-Z/antiのフィコシアノビリン(AnPixJ Pr)とC10-Z,syn/C15-E,anti のフィコビオロビリン(TePixJ Pg)である。(2) ピロール環に配位する保存されたAsp残基は、AnPixJではA・B・C環に、TePixJ PgではD環に水素結合していた。これによって、光励起によるD環の異性化に続く構造変化の普遍性と特異性が明らかになった