抄訳
Jdp2はAP-1ファミリーに属する転写因子であり、破骨細胞分化やヒストンアセチル化制御に関与することが知られている。しかし、血球分化におけるその機能や個体レベルでの生理的意義については謎に包まれていた。そこでJdp2ノックアウトマウスを作成し解析したところ、このマウスがin vivoにおける破骨細胞分化の障害により大理石骨病を発症することを発見した。さらに我々は、Jdp2ノックアウトマウスが黄色ブドウ球菌やカンジダに対し易感染であることを見出し、その原因が分化マーカーLy6Gの発現が減弱した機能異常を有する好中球にあることを明らかにした。好中球のJdp2はC/EBPaと結合しその転写活性を最終分化段階において抑制することで好中球機能(殺菌能、好中球細胞外トラップ形成や自発的なアポトーシス)を最適化させていた。また、好中球の分化マーカーLy6GはATF3によって抑制され、Jdp2はATF3のプロモーター領域に結合してヒストンを脱アセチル化することでATF3の発現を抑制し、適切な分化状態を作り出していた。以上より、Jdp2はin vivoにおける骨恒常性と細菌感染防御を、破骨細胞と好中球分化に特異的な遺伝子の発現調節を介して複雑に制御していることが明らかとなった。