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2014/02/27

プロリン水酸化酵素の阻害は炎症と細胞外マトリックスの破壊を抑制し、腹部動脈瘤の形成を抑制する。

論文タイトル
Suppression of abdominal aortic aneurysm formation by inhibition of prolyl hydroxylase domain protein through attenuation of inflammation and extracellular matrix disruption
論文タイトル(訳)
プロリン水酸化酵素の阻害は炎症と細胞外マトリックスの破壊を抑制し、腹部動脈瘤の形成を抑制する。
DOI
10.1042/CS20130435
ジャーナル名
Clinical Science Portland Press
巻号
Vol.126 No.9 671-678
著者名(敬称略)
渡邉 亜矢、市来 俊弘 他
所属
九州大学大学院医学研究院 循環器内科学

抄訳

プロリン水酸化酵素タンパク(PHD)の阻害剤である塩化コバルト(以下CoCl2)が、腹部大動脈瘤(AAA)の進展に及ぼす効果について検討した。腹部大動脈瘤はC57BL6/Jマウスの腹部大動脈に塩化カルシウム(CaCl2)を塗布し作成した(AAA群)。0.9%塩化ナトリウム溶液を用いてsham対照群(SHAM群)を作成した。また、CoCl2は0.05%溶液を飲水投与した(AAA/CoCl2群)。手術後1週間及び6週間後に腹部大動脈を摘出し、解析した。CaCl2塗布後6週後のマウスでは、SHAM群と比較しAAA群では大動脈径の拡大とマクロファージの浸潤の増加を認めた。AAA/CoCl2群ではAAA群と比較し、瘤径の拡大とマクロファージの浸潤は抑制されていた。炎症性サイトカインの発現や、マトリクスメタロプロテイナーゼ9及び2の活性はAAA群で上昇し、AAA/CoCl2群で抑制されていた。サイトカインの発現やMMPの活性は術後1週間目のAAA群でも増加していた。AAA/CoCl2群でその増加が抑制されており、核内因子κB(NF-κB)のリン酸化の抑制を伴っていた。CaCl2塗布によって誘導されるマウス腹部大動脈瘤の形成において、CoCl2による治療は、炎症と細胞外マトリクスの破壊を抑制し、AAAの進展を抑制した。この結果は、PHDがAAAの進展において重要な役割を果たしていることを示唆し、PHD阻害剤がAAAの進展予防を目的とする治療おいて有用である可能性があると考えられる。

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