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2014/03/26

PDI ファミリータンパク質ERp46の新規ドメイン構造と機能的役割の解明

論文タイトル
Radically Different Thioredoxin Domain Arrangement of Radically Different Thioredoxin Domain Arrangement of ERp46, an Efficient Disulfide Bond Introducer of the Mammalian PDI Family
論文タイトル(訳)
PDI ファミリータンパク質ERp46の新規ドメイン構造と機能的役割の解明
DOI
10.1016/j.str.2013.12.013
ジャーナル名
Structure Cell Press
巻号
Volume 22, Issue 3, 431-443, 23 January 2014
著者名(敬称略)
小島理恵子、奥村正樹、稲葉謙次
所属
九州大学生体防御医学研究所・東北大学多元物質科学研究所

抄訳

哺乳動物細胞の小胞体には20種類以上のProtein Disulfide Isomerase (PDI)ファミリータンパク質が存在するが、個々の因子の生理的機能はほとんど解明されていない。2013年に我々は、新たに見つかったPDI酸化酵素Peroxiredoxin-4 (Prx4) がPDIファミリータンパク質の中でもERp46に対して特に高い酸化活性を有することを報告した (Sato et al., Sci. Rep. 2013)。本研究ではERp46の構造とPrx4とERp46を介した基質へのジスルフィド導入経路の分子機構を解明するに至った。ERp46は3つのチオレドキシンドメイン(Trx)から成るが、この内Trx1, Trx2のX線結晶構造をそれぞれ2.5Å,0.95Åの分解能で決定し、さらにTrx2とPrx4のC末端領域の複合体の結晶構造を0.92Åの分解能で決定することにより、ERp46-Prx4間の特異的な結合様式を明らかした。さらに、X線小角散乱法によりERp46の全長構造のモデリングを行った結果、ERp46は他のPDIファミリータンパク質にはみられない新規な「開いたV字構造」をとることが明らかになった。さらに系統的な生化学機能解析により、ERp46は開いたV字構造上で活性部位を溶媒に露出させ、アンフォールドした基質にランダムかつ迅速にジスルフィド結合を導入するのに対し、PDIはU字構造内部の疎水性ポケットにフォールディング中間体を取り込み、互いに向き合った活性部位が協調的にはたらくことで効率よくジスルフィド結合の組換えを行うことを提唱した。本研究により、ERp46が他のPDIファミリータンパク質では例にみない新規のドメイン構造をもち、タンパク質の酸化的フォールディングの初期過程においてジスルフィド結合導入に特化した機能を有することが明らかとなった。

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