本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2014/07/25

昆虫とボルバキアの栄養相利共生関係の進化的起源

論文タイトル
Evolutionary origin of insect?Wolbachia nutritional mutualism
論文タイトル(訳)
昆虫とボルバキアの栄養相利共生関係の進化的起源
DOI
10.1073/pnas.1409284111
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
2014 111 (28) 10257-10262; published ahead of print June 30, 2014
著者名(敬称略)
二河 成男 深津武馬 他
所属
独立行政法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ

抄訳

昆虫と細菌の栄養相利共生は、あらゆる共生関係のうちで最も高度なものの1つであり、しばしば宿主と共生者はまるで一つの生命体のように統合され、お互いなしでは生きていけない。しかしこのような必須共生細菌も、もとをたどれば自由生活性の細菌に由来するはずである。どのようにして高度な必須相利共生が、より一般的な関係から生じたのかは進化的に興味深い。本研究では、昆虫類における共生細菌ボルバキアとの栄養相利共生に着目してこの問題に取り組んだ。ボルバキアは多様な昆虫類に普遍的にみられ、一般には宿主昆虫にとって必須でない寄生的な共生細菌であるが、トコジラミ(=南京虫)に共生するボルバキア系統wCleは例外で、宿主の成長および繁殖に必須である。このボルバキアwCleの1,250,060塩基対の全ゲノム配列を決定したところ、全般的なゲノム構造は他の寄生的なボルバキア系統とそっくりであったが、例外的な特徴として完全なビオチン(=ビタミンB7)合成経路を含むオペロンが存在していた。このビオチンオペロンは過去に共感染していた他の共生細菌から遺伝子水平転移により獲得したものと推定された。栄養生理学的実験により、ボルバキアwCleは確かに宿主体内でビオチンを合成しており、そのビオチンが宿主の適応度に有意に寄与していることが示された。これらの知見は、ビオチン合成遺伝子クラスターの獲得がボルバキアとトコジラミの栄養相利共生関係の基盤となったことを強く示唆しており、任意共生から必須共生への進化が遺伝子水平転移により促進されたことが明らかになった。

論文掲載ページへ