抄訳
【目的】死後多列検出器型CT検査(PMMDCT:post-mortem multidetector CT)において所見のない頚髄損傷(SCIWORA:spinal cord injuries without radiographic abnormalities)の頻度を調査し、その特徴を検討する。
【方法】解剖前PMMDCTが施行された894例の連続事例の剖検所見を検討し、頚髄損傷が死因であった30事例を集めた。死後画像読影経験4年以上の放射線科専門医2名がCT読影を行い、画像上頚髄・頚椎に外傷所見のないものをSCIWORAと定義した。
【結果・考察】30事例中6事例(20%、95%信頼区間 6-34%)がSCIWORAの定義を満たした。全SCIWORA事例で、CT前に外表所見などから外傷死であることは推定できなかった。また全SCIWORA事例がC3レベル以下の損傷であった。さらに全SCIWORA事例で、解剖所見において、頚椎骨折は認めない一方、CT陰性の頚椎椎間板損傷と椎体周囲出血が認められた。5事例(83%)のSCIWORAで頚髄以外の部位に致死的な外傷は見られなかった。
【結論】致死的な頚髄損傷事例の中には、かなりの割合でSCIWORA事例が見られた。PMMDCTで死亡を評価するとき、評価者はSCIWORAの存在を認識し、CT所見のみで頚髄損傷による死亡を除外してはならない。MRIを使わない限り、頚髄損傷の除外のためには、解剖を行わなければいけない。