抄訳
一般に、微生物は固体と液体の界面に付着し、自ら生産した菌体外マトリックス内で凝集し、バイオフィルムの中で生息する。歯周病は Porphyromonas gingivalis 等のバイオフィルム形成によって始まる口腔感染症である。菌体外マトリックスがバイオフィルム細菌を保護するバリアとして機能するため、バイオフィルム感染症の治療に化学療法は不適切である。先行研究では、最小発育阻止濃度以下のマクロライド系抗菌薬が P. gingivalis バイオフィルムを減少させること、さらに、枯草菌の遺伝子 sinR のオルソログ PGN_0088 が P. gingivalis バイオフィルムの菌対外マトリックスの構成要素である糖成分の合成を抑制することを報告した。本研究では、この遺伝子による菌体外マトリックス中の糖成分の減少が、マクロライド系抗菌薬の浸透率やバイオフィルムの機械的強度に影響を及ぼすことを解明した。