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2016/02/10

生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性

論文タイトル
Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing
論文タイトル(訳)
生細胞と無細胞反応系を統合した新生鎖観察により明らかとなった翻訳一時停止の一般性
DOI
10.1073/pnas.1520560113
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS Published online before print February 1, 2016
著者名(敬称略)
茶谷 悠平、丹羽 達也、千葉 志信、田口 英樹、伊藤 維昭
所属
京都産業大学・総合生命科学部 , 東京工業大学・大学院生命理工学研究科

抄訳

タンパク質の合成(遺伝情報の翻訳)においては、アミノ酸が遺伝子によって指定された順番で、一つ一つ連結されていく。この反応はリボソームの内部で起こり、新たに作られたポリペプチド鎖(新生鎖)の一端はtRNAを介してリボソームに繋がれ、他端は通り道(トンネル)を通ってリボソームの外に向かう。このポリペプチドの伸長過程が緩急の制御を受けることが知られるようになったが、翻訳の一時停止(pausing)がどの程度一般的におこるのかは不明であった。本研究では、この問題を解決するため、リボソームプロファイリング法という強力ではあるが間接的な方法によらず、翻訳の中間体であるペプチジルtRNAを直接的に検出する手法(iNP = integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling)を用いた。大腸菌の1038個の遺伝子の翻訳過程の詳細像を網羅解析した結果、大部分の遺伝子が、1回~複数回の停滞を伴って翻訳されることが明らかになった。一時停止は、in vitro のみで起こるもの、in vivoのみで起こるもの、両方で起こるものに大別され、膜タンパク質と細胞質タンパク質で異なる性質の停滞が起こる傾向や、自発的フォールディングの能力との相関が観察された。翻訳の過程では、広範かつ多様な様式の一時停止が起こることがわかり、機能的タンパク質の形成は翻訳の緩急によっても支えられているものと考えられる。

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