抄訳
福島第一原発事故によって放出された放射性物質による日本産水産物の汚染度の定量化を行った。厚生労働省のデータベースを利用し,2011年4月から2015年3月の放射性セシウム(セシウム134とセシウム137)の測定値を使用した。県と魚種(養殖魚等を除く)の組み合わせで,1646の異なる水産物のデータを使用した。しかし,データには検出限界値未満とされたものが多くあり,従来の方法では汚染度の評価が困難であった。我々が新しく開発した統計モデルを利用することにより,検出限界値未満が多いデータに対しても汚染度の評価が可能となった。その結果,汚染度は全体に低く,海産魚の汚染は従来考えられているほど高くないことが分かった。しかし,天然の淡水魚の汚染は相対的に高いことから,今後も引き続きモニタリングを継続することが重要である(ただし,市場に流通する淡水魚の多くは養殖魚であり,汚染度の高い淡水魚が一般家庭で食べられる可能性は低いであろう)。