抄訳
Paenibacillus sp. IK-5キトサナーゼ/グルカナーゼに存在する二つのCBM32糖質結合モジュール (DD1とDD2) のキトサン認識機構を明らかにするために、NMRおよびX線結晶構造解析によってそれらの構造を決定した。これらのモジュールは両方ともにβ−サンドイッチ・フォールドをコアとしてもち、コア構造の上下にはいくつかのループが存在していた。NMR滴定実験やDD2-キトサンオリゴ糖複合体結晶構造に基づいて、キトサンオリゴ糖はその非還元末端糖残基を、モジュール上部のループ部分と接触させながら、直立して結合することがわかった。その際、DD2のGlu14、Arg31、Tyr36、Glu61がキトサンとの相互作用を担っており、このうち、Ty36はDD1ではGlu36に置換されていた。そこで、DD1のGlu36をTyrに、DD2のTyr36をGluに変異させてキトサンとの親和性を調べた。その結果、36番目のアミノ酸はキトサンとの親和性を支配し、とりわけ、Glu側鎖とキトサンの非還元末端残基に存在する遊離アミノ基との静電的相互作用は重要であることがわかった。