抄訳
安静時機能結合(FC)は非侵襲的な脳のネットワークの研究に広く使われるツールであり、離れた脳部位における血流信号(HemoS)の相関により測られる。機能的結合の空間的なパターンは、血流信号の背後にある神経活動の空間パターンを反映するものと考えられている。これまでの自発的神経活動の研究では、大脳皮質全体を伝播する波のような活動から、解剖学的に繋がった脳領野の瞬間的な同期発火まで、様々な時空間パターンが見つかってきた。しかしながら、これらの様々なパターンが互いにどのような関係にあるのかは良く分かっていなかった。また、これら種々の時空間パターンが機能的結合に寄与するかどうかも不明であった。我々は今回このような問題を解決するために、マウスの大脳皮質全体において、神経活動由来のカルシウム信号(CaS)と血流信号を高時空間解像度で同時記録した。我々は二つの異なって見える活動パターン(大域的に伝播する活動の波と機能的結合の高い脳部位の瞬間的な同期活動)が、実は互いに関係していることを発見した。大域的な活動伝播の中では、それぞれが強い機能的結合で結ばれているような脳部位の組み合わせのうち、異なる組み合わせが異なる瞬間において同期発火しており、このことは機能的結合の持つ空間的な情報は大域的な活動伝播の位相情報として埋め込まれていることを示唆する。更に我々は、CaSで見た同期活動の空間パターンが、そのままHemoSでの空間パターンに反映されていること、そしてこのような同期活動がHemoSで見た機能的結合の空間パターンを作るのに必要なことを示した。これらの結果は、大域的に脳を伝播する自発的神経活動の波が、どのようにして血流信号における機能的結合を生み出すかを説明する。