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2016/07/20

家族性偽性副甲状腺機能低下症1bを招くGNAS領域の複雑染色体再構成

論文タイトル
Complex Genomic Rearrangement Within the GNAS Region Associated With Familial Pseudohypoparathyroidism Type 1b
論文タイトル(訳)
家族性偽性副甲状腺機能低下症1bを招くGNAS領域の複雑染色体再構成
DOI
10.1210/jc.2016-1725
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
JCEM Vol.101 No.7 (2016) pp.2623?2627
著者名(敬称略)
中村 明枝、深見 真紀 他
所属
国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部

抄訳

家族性偽性副甲状腺機能低下症(PHP)1bは、GNAS 領域のメチル化異常に起因する内分泌疾患である。2015年、PHP症例においてGNAS領域の重複を示唆する所見が報告されたが、ゲノム構造は決定されていない。
我々は、家族性PHP1b症例においてGNAS領域のゲノム再構成を同定し、全ゲノムシークエンス解析によってその構造と成立機序を解明した。PHP1bと診断された発端者、母、母方叔父のゲノムDNAを用いたメチル化解析で、GNAS A/B、NESP55の低メチル化、ASXLASの高メチル化を同定した。ゲノム再構成はNESP55ASXLASを包含するタンデムTriplicationおよびGNAS A/Bを包含するタンデムDuplicationで、GNAS翻訳領域のコピー数変化はなかった。母方祖母も同一のゲノム再構成を有したが、GNAS A/Bのメチル化は正常であった。本症例では、GNAS A/Bに対するシス因子のDNAメチル化制御機構の破綻によってGNAS発現調節異常が生じると推測される。ゲノム再構成は母由来アレルに存在する時にGNAS A/Bの低メチル化を招くが、母方祖母ではゲノム再構成が父由来であったためGNAS A/Bのメチル化は維持されたと推測される。以上の成績は、ヒト遺伝病の新たな発症機序を示唆するものである。

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