抄訳
膀胱癌の診療において、腫瘍の存在診断のみならず、進達度診断、悪性度や治療効果判定等の質的診断が求められる。拡散強調MRI (DWI)は組織内の水分子の動きである拡散現象を利用した機能的画像法であり、近年、膀胱癌の評価における臨床利用が進んでいる。DWIにて膀胱癌は明瞭かつ均一な高信号を呈し、その一方で膀胱内の尿の信号は良好に抑制されため、DWIは膀胱癌の描出に優れている。DWI信号は腫瘍組織の特徴を反映し、その信号の定量的指標である見かけの拡散係数(ADC値)は組織学的悪性度や生物学的悪性度を反映するイメージングバイオマーカーとなる。膀胱癌の再発評価、化学放射線療法に対する感受性予測や治療効果判定等の臨床経過の評価におけるDWI信号やADC値の有用性が示されている。さらに、DWIBS法の使用により、一度に全身のDWIを撮影可能となっており、転移性膀胱癌の評価における有用性の確立に期待される。