抄訳
活性イオウ分子種(RSS)は、生体内で産生され非常に高い抗酸化能を示し、生体内のレドックス恒常性を維持している。加えて、標的タンパク質の特定のシステイン残基を多イオウ化修飾(-S-(S)n-H: S-ポリスルフィド化)することでタンパク質機能を調節している。一方、Ca2+/カルモデュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼIV(CaMKIV)は、Ca2+/CaM結合と上流のキナーゼによるリン酸化修飾によってその活性が制御されている。本論文では、核内に局在するCaMKIVのRSSによる部位特異的S-ポリスルフィド化修飾によって、下流の遺伝子転写活性が抑制されていることを見いだした。さらに、これらの現象が小胞体ストレス時に作動していることを示唆した。つまり、小胞体ストレス時の新規応答システムの1つとして、RSSを介した新規CaMKIV活性阻害による遺伝子転写活性抑制があるのかもしれない。