抄訳
Alcadeinα(Alcα)/Calsyntenin-1はキネシン-1と直接結合することで輸送小胞カーゴとして神経軸索上を輸送される。しかしながら、ゴルジ体において特異的にAlcαカーゴが形成される仕組みやキネシン-1がAlcαと結合する制御機構は未解明であった。
我々はAlcα細胞質ドメインの3ヶ所のSer残基のリン酸化がキネシン-1への結合に必要であることを新たに見いだした。AlcαはGolgi体においてアダプタータンパク質X11Lを介してアミロイド前駆体タンパク質(APP)と複合体を形成しているが、通常これらは別々の輸送小胞を形成し軸索中を輸送される。しかし、キネシン-1結合能の低いAlcαリン酸化サイトのアラニン変異体はAPP小胞に入り込むことで軸索中を高速に輸送されていた。加えて、Alcαアラニン変異体はGolgi体における輸送小胞の形成効率が低いことを見いだした。これらの結果から、Golgi体におけるAlcα特異的な小胞形成にはリン酸化により制御されるキネシン-1への結合が必要であることが明らかになった。Alcαはカーゴ受容体として機能すると考えられており、Alcαのリン酸化は小胞内に含まれるカーゴ分子が必要な時期に必要な量を軸索末端に送るためのシグナルとして機能することが示唆された。