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2018/04/02

選択的アンドロゲン受容体作動薬S42は前立腺癌細胞の増殖を抑制する

論文タイトル
Selective Androgen Receptor Modulator S42 Suppresses Prostate Cancer Cell Proliferation
論文タイトル(訳)
選択的アンドロゲン受容体作動薬S42は前立腺癌細胞の増殖を抑制する
DOI
10.1210/en.2018-00099
ジャーナル名
Endocrinology Endocrine Society
巻号
Endocrinology Vol.159 No.4 (1774?1792)
著者名(敬称略)
川波 賢子, 柳瀬 敏彦 他
所属
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科

抄訳

我々は以前、前立腺を刺激せずに脂質代謝に有益な効果を有する選択的アンドロゲン受容体(AR)修飾剤S42を同定した。S42はDHT刺激下のAR転写活性化を抑制することから、今回、S42の前立腺癌細胞増殖に対する影響を検討した。S42はAR陽性前立腺癌細胞LNCaPおよび22Rv1の基礎あるいはDHT依存性の細胞増殖を顕著に抑制したが、AR陰性PC-3細胞でもわずかに同様の現象を観察した。S42はTUNEL法でアポトーシスを誘導せず、BrdUの取り込み(細胞分裂)を有意に抑制した。S42は前立腺癌細胞における成長因子誘導性のErk-MAPKのリン酸化を抑制した。一方、DHTはERK-MAPKの発現を増加させたが、これもS42によって阻害された。S42はDHT誘導性に増加したAR、IGF-1受容体(IGF-1R)およびインスリン受容体(IR)のタンパク質発現も抑制した。S42はLNCaP細胞をヌードマウスへ播種し作成した腫瘍の増殖も有意に抑制し、腫瘍組織内のPSA、P504S、Ki67およびリン酸化ERK-MAPKの発現を減少させた。結論として、S42は増殖関連受容体(IGF-1R、IR、AR)の発現阻害やERK-MAPKの活性化抑制を介して前立腺癌増殖を抑制する。S42は前立腺癌治療の有用な候補物質となり得る。

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