抄訳
膵神経内分泌腫瘍(PanNET)では、高頻度にDAXX遺伝子変異、蛋白欠失が認められる。DAXXは転写抑制因子として知られているが、PanNETにおける意義には不明な点が多い。我々は臨床検体を解析し、DAXX蛋白の低発現症例が非機能性、Ki-67高値、G2に多く、その33.3%に遺伝子変異を検出することを明らかにした。さらにゲノム編集にてDAXX遺伝子をノックアウト(KO)したヒトPanNET細胞株を作成し、microarray及びクロマチン免疫沈降法にて標的遺伝子を探索した結果、DAXX/H3.3/H3K9me3経路により直接転写抑制される標的遺伝子STC2を同定した。DAXX-KO PanNET細胞ではスフェア形成能が亢進したが、その効果はSTC2ノックダウンにより解除された。マウス腫瘍モデルでは、DAXX-KOにより造腫瘍能が亢進しSTC2蛋白高発現を認めた。臨床的には、DAXX低発現かつSTC2高発現症例で有意に再発率が高かった。DAXX低発現と標的分子STC2高発現の組み合わせはPanNETの再発バイオマーカーであり、治療標的となる可能性が明らかとなった。