抄訳
リンは生体内で多様な作用を有しており、血中リン濃度は一定の範囲に維持されている。線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)は骨により産生されるリン調節ホルモンで、腎近位尿細管リン再吸収と、血中1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介する腸管リン吸収の抑制により、血中リン濃度を低下させる。過剰なFGF23活性により、いくつかのFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症が惹起されることが明らかにされた。特に、phosphate-regulating endopeptidase homolog, X-linked (PHEX)遺伝子不活性型変異によるX染色体優性低リン血症性くる病(X-linked hypophosphatemic rickets: XLH)は、遺伝性低リン血症性くる病の中で最も頻度の高い疾患である。リン製剤と活性型ビタミンD製剤が、現状ではXLH等に対し使用されている。しかしこれらの治療には、有効性や有害事象の点で、限界があることが知られている。そこでFGF23の活性阻害が、XLH等に対する新たな治療法となるかどうかが検討されている。特に、FGF23活性を阻害するモノクローナル抗体は、FGF23関連低リン血症性疾患に対する新規治療として有望視されている。
追記
本論文執筆後の2018年に、抗FGF23抗体はEuropean Medicines Agency(EMA)、およびFood and Drug Administration(FDA)からXLHに対し認可された。