抄訳
細胞内でいかに多様なアクチン線維構造が生み出され、異なる動態を示すかについては多くの謎が残されている。以前われわれが報告したように、フォルミンファミリーはアクチン線維端に結合したまま連続的に線維を伸長するとともに、線維の二重らせん構造に沿って回転する。今回、フォルミンファミリーの1つmDia1がそれ自身と線維の反対端が固定されるとアクチン線維のねじれを緩める力を発生し、アクチン脱重合因子コフィリンによる線維切断を抑制することを見出した。コフィリンはアクチン線維のねじれを30%増強することが知られている。培養細胞では、細胞構造につなぎとめられるタイプのmDia1の活性型変異体(ΔC63)を過剰発現すると、アクチン線維の寿命が延長し、コフィリンへの結合が減弱することが判明した。さらに電子顕微鏡を用い、mDia1が生むトルクがアクチン線維のらせんピッチ長を延長することを可視化することに成功した。本研究は、線維のねじれを介して遠距離にある分子の働きを変えるユニークなしくみを明らかにするとともに、多様なアクチン構造が細胞内で共存しながら作動するメカニズムの解明に向け、新たな枠組みを提供する。