抄訳
インクレチンのglucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)は心血管系への直接的な作用を示す。本研究は、マウスの大腿動脈ワイヤー傷害モデルを用いてGIPの末梢動脈リモデリングに対する作用を評価した。野生型のマウスにGIPを持続投与することで動脈リモデリング(新生内膜過形成)が抑制された。この作用は一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬の同時投与で消失したことから、NOの関与が示唆された。反対に、GIP受容体をノックアウトすると動脈リモデリングが悪化した。培養のヒト臍帯静脈内皮細胞において、GIPは細胞内カルシウム濃度を増加させ、AMP-activated protein kinase (AMPK)依存的にNO産生を促進した。GIPはリン酸化AMPKを増加させ、この作用はカルシウムを介したシグナル伝達に関与するphospholipase Cとcalcium-calmodulin-dependent protein kinase kinaseの阻害で抑制された。さらにGIPの効果は、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスと高血糖で培養したヒト臍帯静脈内皮細胞においても同様に認められた。本研究から、マウスモデルにおいてGIPが末梢動脈のリモデリングを抑制し、この作用に血管内皮細胞におけるカルシウムを介したAMPKの活性化が関与することが示された。