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2018/07/24

シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している

論文タイトル
Cholesterol Metabolism Is Enhanced in the Liver and Brain of Children With Citrin Deficiency
論文タイトル(訳)
シトリン欠損症小児におけるコレステロール代謝は肝臓と脳において亢進している
DOI
10.1210/jc.2017-02664
ジャーナル名
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Endocrine Society
巻号
J Clin Endocrinol Metab Vol.103 No.7 (2488?2497)
著者名(敬称略)
平山 哲 他
所属
順天堂大学医学部・臨床検査医学講座

抄訳

シトリン欠損症は、シトリン遺伝子(SLC25A13)の異常による常染色体劣性遺伝疾患である。発症時期により、新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)と成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)に分類される。シトリンは、肝臓のミトコンドリア膜にあるアスパラギン酸とグルタミン酸の輸送蛋白であり、リンゴ酸‐アスパラギン酸シャトルを構成する。細胞質で生じたNADHの還元エネルギーをミトコンドリア内に輸送し、NADHを産生する。一方、シトリンの機能低下では、細胞質のNADH過剰とNAD+枯渇が生じるが、リンゴ酸‐クエン酸シャトルが代償的に働き、多くのNICCDは、幼児期から学童期に一旦改善する(適応・代償期 = post NICCD期)。post NICCD期のシトリン欠損症は、糖質を嫌い、高脂肪・高蛋白食を好む。高コレステロール血症を生じるが、肝機能は正常であり、一部患児にのみ種々の代謝障害が生じ、思春期以降にCTLN2を発症する。我々は、post NICCD期のシトリン欠損症における高コレステロール血症の病態を明らかにするため、LC-ESI-MS/MSを用いてコレステロール合成・吸収・異化マーカーを測定し、脂質プロファイルとの関連を調べた。対象は、5歳から13歳のシトリン欠損症小児20名と健常小児37名である。シトリン欠損症群は、健常群に比しHDL-C濃度が有意に高く(78 ± 11 vs. 62 ± 14 mg/dL)、LDL-CおよびTG濃度は差がなかった。シトリン欠損症群のコレステロール合成マーカー(lathosterol・7-dehydrocholesterol)と異化マーカー(7α-hydroxycholesterol・27-hydroxycholesterol)は、健常群に比し各々1.5~2.8倍、1.5~3.9倍高かった。中枢神経系でのコレステロール異化マーカーである24S-hydroxycholesterolは、シトリン欠損症群で2.5倍高かった。両群のHDL-C濃度は、胆汁酸合成の副経路で産生される27-hydroxycholesterol濃度と有意な正相関を示した。以上より、post NICCD期のシトリン欠損症は、HDL-Cおよび種々のステロールマーカー濃度が高く、特に肝臓および脳でのコレステロール合成と異化が亢進していると考えられる。

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