抄訳
原発性アルドステロン症(PA)でのRAS系の検討はされているも、ACTH系の病態への関与は知られていない。一方、KCNJ5変異アルドステロン産生腺腫の症例は、重症型PAである。そこで、KCNJ5変異の有無とACTH経路の臨床的関与につき検討した。方法:APA141例を対象とし、ACTH負荷試験、1mgデキサメサゾン負荷試験(DST)を含む各種術前内分泌検査とKCNJ5遺伝子変異の相関を横断的に検討した。また、超選択的副腎静脈サンプリング(SS-ACTH-AVS)におけるACTH負荷後PAC, 血清コルチゾール値(F)と変異の相関についても検討した。結果:KCNJ5変異は76%に認められ、非変異群に比し、血漿アルドステロン濃度(PAC)基礎値、生食負荷試験後PAC・ACTH負荷試験後PACが高値を示していた。一方、変異群でDST後にPACの強い抑制を認め、多変量解析でもDST後PAC抑制度はKCNJ5変異の有無と正の相関を認めた (P=0.01)。SS-ACTH-AVSでは、変異群において病変側のPAC/F比が高値を示した。免疫組織染色にて、CYP11B1とCYP17が有意に発現増強していた。考案:変異群においてDST後のPAC抑制度が強いことは内因性ACTHへの高い反応性を示し、AVS所見もそれを支持する結果であった。結論:1mg DSTによるPAC抑制性は、APAのKCNJ5変異を予測する上で重要な指標である可能性が示された。