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2004/04/30:第141号学協会出版社協会、製薬業界による電子ジャーナルの利用について綱領草案を作成
 

学協会出版社協会、製薬業界による電子ジャーナルの利用について綱領草案を作成
学協会出版者協会(Association of Learned and Professional Society
Publishers:ALPSP)は、製薬会社が電子ジャーナルのコンテンツを利用する
場合の綱領草案(Code of Practice)を作成し、ホームページ上で公開した。

 製薬会社では、学術ジャーナルを研究資料として社内的に利用する以外に、
薬事行政当局への申請、医療従事者からの問い合わせ、また自社商品の販促
資料として、第三者に学術論文のコピーを提供する場合があるが、そのような
利用におけるライセンスや価格設定が不明瞭であることが問題視されてきた。
ALPSPは、このような問題に対処するため、Pharma Documentation Ringおよび
Publishers Associationと共同で調査委員会を設立し、製薬会社による学術
ジャーナル、特に電子ジャーナルコンテンツの利用規定について協議してきた。
今回作成された綱領草案は当委員会による最初の調査報告として公開され、
6月末まで出版業界、製薬業界の双方からコメントを受付けている。

 当綱領草案では、製薬会社が自社の薬品に関する学術論文を第三者に提供する
場合として、(1)薬事行政当局へ認可申請や有害事象の報告を行う際の参考資料と
して利用する場合<Regulatory use>、(2)訴訟手続などの際に証拠として裁判所
などから提出を求められた場合<Legal use>、(3)自社の薬品に関する詳細情報
を医療従事者から要求された場合<Reactive distribution of single copies
(e.g. Medical Information)、(4)自社製品の販促資料として複数のコピーを
医療従事者などに配布する場合、もしくは自社のホームページなどからダウン
ロードできるように公開する場合<Proactive distribution of multiple
copies (e.g. Marketing)の4つに分類している。

 学術ジャーナルが冊子体のみで提供されていた時代には、いずれの場合に
おいても、第三者に提供する数のコピーを別刷り(リプリント)注文することで
利用規定に触れることなどはなかった。しかし、学術論文が電子ジャーナルとして
提供されるようになり、複製、送信が容易に行えるPDFでの配布が普及したため、
改めて利用規定を作成する必要が生じている。

 ALPSPでは、当綱領草案において、「論文コンテンツをそのままの形で保持する」、
「著作権に関する警告文などを記載する」などの条件を満たしていれば、通常の
ライセンス購読の利用規定に、上記(1)、(2)、(3)の場合におけるコンテンツの
転用許可を含めるべきだとしている。一方、同(4)の販促資料としての複数コピーの
利用については、出版社のリプリントによる収益を守るため、個別のライセンス契約
の必要性を認めているが、価格モデルをできるだけ明瞭にするよう出版業界に要求
している。

 冊子による学術論文の提供形態から、インターネットによる電子ジャーナルの
提供が主流となり、論文利用の多様性、利便性が向上したが、一方で著作権の保護、
無断転用・複製の規制が困難になった。今回の綱領草案が審議されることで、
製薬業界による電子ジャーナルの利用規制が標準化され、電子ファイル管理技術の
開発と普及に拍車が掛かることが期待される。

<参考資料>
・学協会出版者協会(ALPSP)ホームページ
http://www.alpsp.org/e-contentpharma.htm

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